2chとAAと著作権(著作者人格権)について

※書き終わったあとで「あんま情報技術とかWWWとか関係ないよなー」とも思ったけれども、既存の法律(著作権法)の問題点についてもちょっと関係あるので。


今大変話題になってますね。エイベックスがやらかして。
モナーギコ猫著作権というのは非常に難しい問題です。
そして「WWWと著作権」の良い事例だと思うので取り上げてみます。
(WWWと著作権に関してはまた後で詳しく。とりあえずは当初の問題について。)


まず、AVEXの行為、具体的にはモナーギコ猫モララーと言った2ch発祥*1のキャラクターを無断で「のまネコ」と称し商品化し販売を始めたこと。
この事自体は法的には全くもって問題ありません。
正直かなりはらわた煮えくりかえっているのですが、あくまで日本国の著作権法と照らし合わせた場合ね。
なぜなら非常に単純で「AAキャラクターに著作権は存在しないから」なのです。
それは「著作権者」がいないから。
著作権著作権法というのは「著作権者」「作者」の存在を前提として、それらの権利を守るための法律やしくみです。
ところが「作者」が匿名の場合は?著作権の所在が不明な場合は?
それらが存在しなければ、著作権も存在しないのです。


現在、2chに投稿する場合(Cookieをまだ食ってない場合)このような条文が表示されます。

投稿確認
・投稿者は、投稿に関して発生する責任が全て投稿者に帰すことを承諾します。
・投稿者は、話題と無関係な広告の投稿に関して、相応の費用を支払うことを承諾します
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき、掲示板運営者及びその指定する者に対し、これらを日本国内外において無償で非独占的に利用する一切の権利(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)を許諾することを承諾します。また、掲示板運営者が指定する第三者に対して、一切の権利(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)を許諾しないことを承諾します。
・投稿者は、掲示板運営者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。

つまり、投稿者はコテハンの有無(実名/キャップつきの投稿にしてもです)に関わらず「ひろゆきが勝手に使っていいよ」と承諾した上で書き込むのです。
しかし、どこにも「全ての投稿の著作権ひろゆきに帰属する」とは書かれていません。
ただ、非常に回りくどい言い回しながら無断で出版等の行為を行った場合訴訟ができるとも書かれています。


問題点は金の流れが明確ではないということ。
例えば散々話題になった「電車男」。
全てのレスの著作者であるところのひろゆきに幾ら金が入ったのだ?印税は?
それ以前から存在する2ch本に関しても同じ事が言えます。
どのような契約なのかひろゆきは利用者(=作者、つまりユーザ)に知らせる必要があると思うのですが。
まぁ、著作権を放棄すると同等の条文を承諾した上で書き込んでいるので、その時点で投稿者の著作者人格権は消えるのですがね。


さて。
じゃあAAキャラクターの場合どうなるのか?
第二段と第三段は矛盾しているように思えます。
ところがまずギコ猫の場合2ch発祥ではない。
モナーにしても、第三段で引用した条文が表示される前から存在しています。
(2chがまだ、すごく自由でアングラだった頃の話です)
つまり、作者も著作権者も存在しない、そういうものだという事です。
誰が作ったのか分からない。
そういう物に著作権が存在するのか?ということです。


今回の騒動を見るとタカラギコ祭りを思い出します。
タカラギコ祭りの場合は結果として「タカラギコ」としてタカラがコケにされるという事になり、タカラは大きくイメージダウンしました。
自業自得ですが。
この場合著作権でなく商標権になってきますが。


商標権という点でもAAキャラというのは難しい。
AAキャラは果たして「商標」なのか?
AAキャラが利益を生み出すのは確かです。
実際に数々のAAキャラが商品化されています。
じゃあ商品化する際にいちいちひろゆきの許可を取ったのか?と言ったら実際は無許可のものが多数です。
作者も著作権者も存在しないものを使って商売しようが法律的には何ら問題はないのですから。


「商標登録」とはつまり「その商標を使って独占的に商品を販売しても良い権利」の事です。
故に一般的なもの(たとえば花柄とか、唐草模様だとか)は自由に商売に使っても良いし、商標登録は出来ない。
しかし花柄でも「こういう花柄はうちのオリジナルだ」と主張すれば商標登録は認められます。
なぜ花柄かと言ったらふと花柄のシーツが目に入ったからなのですがw
2chの場合、2chあるいは西村博之が何一つとして「商品」を出していないのです。
そして一般的であるということ。
この事からタカラギコの際結果として西村博之がギコを商標登録をすることはなかったし、できなかったのです。


故に、AVEXが「のまネコ」を商標登録することは無理でしょう。
また商標登録を理由にAAの作成を制限するというのも無理。訴訟すれば間違いなくひろゆき(2ch)が勝てます。
その点に関しては問題がないと言えます。
ただ、何より企業としてのモラル。その点に尽きますね。
私は正直AVEXという企業が好きじゃありません。
これは個人的な趣味の問題なのですが、プログレッシブトランスを大変低俗にしたので。
それはまぁ別として、何とも思っていないのでしょうねAVEXは。
「商標」として存在しない以上西村博之が「商標権が侵害されている」と逆に訴訟したところで敗訴するのは目に見えています。
企業のモラルとしてWWW上に存在しているキャラクターの名前を改変(改悪)して商品化するのはどうよ?という事です。
残念ながら止めさせる法律はありません。モラルがない、そう言うしかないのです。
結論を言うと「どうしようもないが、そんなに悲観することもない」ということです。


WWWと著作権についてはまた今度書きます。

追記。

AVEXecサイトはPC向けだけでなく携帯向けサイトもある、元々はWWWから人気に火が点いたにもかかわらず今はDQN層にも人気があるという事から不買運動は無意味と思われます。
ただ、Tシャツが激しくダサかったり、そもそも可愛くないからあまり売れなくて結局大損害、下手なことはしない方が良いねってことになると思いますがね…。
AVEXがなぜ一言も「ギコ猫」とか「モナー」とか言わないのは何より「2ch発祥」というのが嫌だからでしょう。
2chで散々叩かれていますからね。私も大嫌いです。

*1:厳密にはギコ猫はそうではないのですが、都合上こうしておきます